ブルターニュ南部のコルアイユの善良な王グラドロンは、溺愛していた美しい娘ダユーの為にイースの都を建設しました。イースは海面よりも低い土地に建設されたため、立派な水門と堤防に守られていました。ダユーは放蕩で悪徳の限りをつくし、彼女の治める都は欲と快楽の上に繁栄していました。美しいダユーに求婚する男性は数知れず、彼女と一夜を過ごした男性は魔法によって無惨にも殺され海に捨てられていました。ある日、頭から足の先まで赤の衣装に身を包んだ不思議な王子が現れます。今までの男とはまったく違うこの男は、この堕落した町に罰を与えるべき登場した神の使いでした。ダユーは恋に落ち、男の要求通りに、王が首にかけていたイースの水門の鍵を盗み出してしまいます。それと同時に、繁栄した都は一瞬のうちに、海底に沈んでしまいました。それからというもの、人魚になったダユーは、その魅惑的な歌声で男たちを海に誘い出しました。人魚ダユーの姿を見たものは、決して生きて戻ることはなかったといいます。
海底に眠るイースの都は、グラドロンの教会でミサが行われなくなるとき、この世のものとは思えないほど美しい姿で浮上してくると言われています。パリ(Par-Is)は、「イースのような」という意味から名づけられました。
当時のブルターニュ地方はアルモリカ(海の国)と呼ばれており、ケルト難民が大勢押し寄せていました。この地に伝わる伝説には、ケルト神話的なものが数多く残っています。19世紀にテオドール・エルサール・ド・ラ・ヴィルマルケによって「バルザス・ブレイズ」がまとめられました。ドビュッシー作曲の「沈める寺」は、この「イースの伝説」が元になっており、グラドロンの教会での祈りの声とイースが浮上するその姿、そして鳴り響く教会の鐘の音を表現したものです。なんとも幻想的なプレリュードではありませんか。