雲の流れを見ていると、
すべてはやがて過ぎ去っていくことを思い出す。
あの形は、次の瞬間にはもう違っていて、
輪郭はほどけ、薄くなり、風の向こうへ運ばれていく。
追いかけても、つかもうとしても、
雲は雲の速度でしか進まない。
だから私は、ただ見上げる。
「いま、そこにある」という事実だけを受け取って、
変化していくものの美しさに、しばらく身を預ける。
手放すことは、決して失うことではなく、
次に訪れる静けさと出会うこと。
空が空に戻っていくように、
心もまた、本来の広さへ戻っていける。
雲と共に、音も流れていく。
フィリップ・グラスの Aguas da Amazonia より “Madeira River”。
中盤から現れる旋律は、感情を煽るのではなく、
時間そのものに耳を澄ませる感覚を連れてくる。
何かを変えようとしなくてもいい。
ただ、流れていくものを見送りながら、
自分の中に残るものが何なのかを確かめていく。
雲が遠ざかるほどに、
不思議なくらい、内側は澄んでいく。



