祟りの人面石と笑いの浄化

笑いと癒し

通訳しているコースで、グラウンディングのために「石ころ」を使うと良い、という話がよく出る。
すると、
「どこかで拾ってきた石を使うのはちょっと怖い」
という人が何人もいて、ふと子供の頃のことを思い出した。

毎年夏になると、叔母が東京の外れ、秋川渓谷へ連れていってくれた。ある年、母から「漬物石を拾ってきて」と頼まれ、私は川原で見つけた、美しい白い石を選んで持ち帰った。
赤ちゃんの頭くらいの大きさで、ずっしりと相当重たい。帰りの電車がつらかったのを覚えている。こんなものを小さい子供に頼むなんて、うちの母親もどうかと思う。

しかし家について改めて眺めると…

それはもう、どう見ても 頭蓋骨 だった。

「人面石だ!!」「しゃれこうべだ!!」
家族は大騒ぎになり、怖がって母も祖母も叔母も漬物石として使いたがらない。
そのまま、人面石は出窓の観葉植物の間に置かれ、母は「そのうちお寺に持っていく」と言ったきり。

やがて石は後ろ向きにされ、インテリアとも祟り物ともつかない存在として出窓に鎮座しつづけた。
その年、両親が離婚することになり、(母の話では他にもいろいろ不運があったらしい)それはすべて人面石のせいにされていた。

そんなある日、学校で検便があった。
当時は小さな丸いプラスチック容器に入れて提出する方式。

ふと見ると、あの恐ろしい人面石の上に、その容器が乗っているではないか。

── 何という罰当たりなことを!!

犯人は、勉強ができて頭のいい妹だった。
「だって、ホカホカだったから。冷たそうな石で冷やそうと思って」
と言うのだ。

人面石の上に、うんこがオン。
うんこ on the 人面石。

その瞬間、人面石さまの威厳は完全に崩壊。
家族は大爆笑。笑いに笑い転げた。

そして不思議なことに、その後、我が家では悪いことが起こらなくなったという。
うんこによる邪気浄化など聞いたことがないけれど、どうやら強力だったらしい。

(もっとも私は、もともと悪いことが本当に起きていた記憶もない。
両親の離婚だって、今振り返れば、それぞれの人生の新しい門出だったのだと思う。)

かわいそうな人面石はすっかりパワーと威厳を失い、後ろを向いたまましばらく出窓に放置され、そのうち邪魔者扱いされるようになった。
漬物石になることも叶わず、母はようやく処分を決意。

荒川にでも投げてくればいいのに、母は丁寧にお寺に持っていき、供養料1万円を払って人面石とお別れした。
その時の、人面石のうなじには、ほんの少し哀愁が漂っていたような気がする。

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