静けさの中で、ほんとうの私に還る

成熟のレッスン
静けさの中で、ほんとうの私に還る|喪失と再生のあいだで見つけた真実の自分

世界が変わり、信じていたものが崩れたとき、
心の奥で微かな声が響く。
「それでも、あなたはあなたであり続けなさい。」

その声は大きくもなく、強くもない。
けれど、不思議と確かで、何度も胸に戻ってくる。
過去を見つめ続けていた眼差しを、
今という瞬間へと戻すことができたとき、
そこに、再び歩き出すための光が生まれる。


“The journey to uncover who we truly are is a never-ending one.”
私たちが本当の自分を見つけていく旅は、終わることのないものだ。

この言葉を読んだとき、
長い旅の途中にいる自分を、
ふと立ち止まって見つめ直すような感覚があった。

生まれてから今日まで、私は何度も新しい場所に立ち、
そのたびに「これが私だ」と思ってきた。
けれど、その「私」はいつも、
知らないうちに少しずつ形を変え、
静かに次の段階へと移っていった。

かつてのチェンマイは、
私にとって心の拠り所のような場所だった。
信頼できる人たちに囲まれ、
穏やかで、あたたかい世界が確かに存在していた。

けれど、コロナを境に、その風景は静かに崩れ始めた。
笑顔の奥に滲む不安や距離、
言葉にならない違和感。
築いてきた信頼が、少しずつほどけていく感覚。
私にとって、それは想像以上に大きな試練だった。

心のどこかで、
「もうあの頃の場所には戻れない」と
わかっていた気もしている。
それでも、失ったものにすがるように、
何度も過去を振り返っていた。

けれど、振り返るほどに痛みは深まり、
あるとき、はっきりと気づいた。
もう過去の方を見続けていてはいけないのだ、と。

真実の自分を生きるということは、
何かを証明することでも、
理想の姿に近づくことでもない。
ただ、今この瞬間に立ち返ること。

誰かの期待でもなく、
かつての記憶でもなく、
たったひとつの静かな呼吸の中に、
私自身を見つけていくことなのだと思う。

瞑想のように、呼吸を数えるたび、
失われたものの重さよりも、
今ここにある生命の息づかいが、
少しずつ近づいてくる。

過去が溶けていくほどに、
心の奥に、かすかな光が戻ってくるのを感じる。

自然の中で目を閉じると、
遠い空の向こうから、
微かな声が届くことがある。
「恐れずに、もう一度始めなさい。」

そう告げる声は、
他の誰でもない。
私の内側にいる、
私自身、そして私の本質だ。

たとえ何度崩れても、
私はまた息をして、生まれ直せる。
そして、静けさの中で、
自分へ還っていく。

音楽:坂本龍一〜映画 リトル・ブッダよりAcceptance

「受け入れる」という言葉は、ときに誤解されがちだが、
この曲を聴いていると、それが決して諦めではなく、
起きてしまった現実を引き受けた上で、
なお生きていくための静かな強さなのだと感じる。

抗わず、逃げず、でも自分を見失わない。
そんな在り方を、この音楽は淡々と、そして深く支えてくれる大好きな曲。

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