スピカと、記憶のほうからやってくる時間

星空の思索
スピカと音楽が呼び覚ます記憶|In Retrospectに導かれて

去年の七夕の日の夜の写真。
西の低い場所におとめ座のスピカが光っていた。
本当に短い時間だったと思うけれど、その青白い光の感じが、今でもふと蘇るんだよね。

長男のお嫁ちゃんが車のルーフトップから顔を出して、指さしている先の星はおとめ座のスピカ。
車内にいるお孫ちゃん1号と2号は、
「外に熊がいるから絶対に出ない!」と断固拒否。
ママやわたしを心配するその真剣さが可愛すぎる笑
(車外にいる私はともかく、ママは車内で屋根から顔を出してるだけなのにねw)
でもこの地域、実際に「熊注意」の看板があるから、いちばん正しい判断だったのかも。笑

そんな小さなドタバタのすぐそばで、スピカだけは何も言わずに淡く光っていて、あのシャッターを切った瞬間の静けさが、なぜかとても印象的な一瞬だった。

賑やかな時間と、静かな星の光が、同じ一枚の空の中に重なっていたあの感じ。
(電線も写っちゃったけどもw)

ヤコブ・ミュールラッド In Retrospect を聴くと、あの感じの空気がすぐに戻ってくる。
記憶が映像みたいに蘇るというより、音の揺れが、あのときの空気の温度とか、胸の奥の微妙な動きとか、そういう粒の細かい部分だけを連れてくる、そんな曲で。

最初は静かすぎるくらいなのに、重ねられた和音が少しずつ膨らんで、気づくと心の奥の何かが動いてしまう。
星の名前を覚えていなくても、どっちがスピカだったのか確認できなくても、その夜の空の感じだけは、音と一緒にちゃんと残っていて。

いや、たぶんそれは、星を見た記憶でも、音楽を聴いた記憶でもなくて、あの夜に確かにあった家族の平和な時間そのものが、スピカや In Retrospect に結びついて残っているからだろう。

特別な出来事は何も起きていない。
熊を怖がって車から出ない子たちがいて、少し背伸びするように星を指さすお嫁ちゃんがいて、空の低いところに、静かに光るスピカがあった。
それだけなのに、その「何もなさ」が、とても豊かだった。

In Retrospect を聴くと、過去を辿ろうとする前に、記憶のほうから、あの穏やかな気配が近づいてくる。
ああ、あれはちゃんと守られた時間だったんだな、ってあとから分かるような感覚。

星は毎年沈むし、同じ配置には二度とならないけれど、家族の間に流れていたあの夜の安心感や、呼吸のリズムみたいなものは、スピカの光や、この音楽と結びついて、今も静かに残っている。

そしてこの写真が見たくなる。
それがなんだか嬉しいんだよね☺️

とんでもなく美しく静謐な小曲です。ぜひ聞いてみてね。
Music:In Retrospect – Jacob Mühlrad

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